MECP2重複症候群
ウエスト症候群
鵜飼 雅人くん
小学校4年生
CBD使用歴6ヶ月
CBD+CBG摂取量30mg/kg/day(23kg)
Q:お父さまに伺います。雅人くんのご病気が分かった時のことを教えて頂けますか?
先天性のものなので産まれた時から何かがあったとは思いますが、何かおかしいと妻が気付いたのは生後半年の時です。6ヶ月検診の頃になっても首すわりやズリバイ、ハイハイする気配が一切なく、保健センターの紹介で小児神経で診てもらっても異常はなくただ発育が遅いという感じでした。寝返り、起き上がってくるようになったのは1歳半から2歳の時です。今は起き上がることはできますが、移動や有意語などはできない状態です。
診断がついたのは4歳~5歳の時です。遺伝子検査をした結果、MECP2重複症候群だと分かりました。発達にかかわる遺伝子が重複している進行性重度神経疾患で、反復性(周期性)の呼吸器感染症、難治性てんかん発作、重度の便秘があり、他にも、乳児期の低筋緊張、摂食困難、中度から重度の知的障害、言語習得困難、歩行困難や歩行不能。特に学童期から思春期に進行が進みやすい疾患です。
Q:発達の遅れ以外に気になる症状はありましたか?
赤ちゃんの時はミルクの飲みが悪くミルク入院を勧められました。入院は見送りましたが、小児用の体重計を買ってどのくらい飲んだか毎日記録を録りました。
現在の食事は普通食を食べていますが、水分はよく咽せ込みます。
また感染症にとても弱く退院したその日の夜に入院ということもありました。
Q:診断されるまでの4~5年をどのよう過ごされていたのか教えて頂けますか?
小児神経、漢方外来、整形外科、静岡てんかんセンター、大学病院など診察券は何十枚もあります。根本的な問題というところでは小児神経なのかなと思いながら、風邪を繰り返すなどの日々の感染症に関しては小児内科、いびきが酷い時は睡眠外来に通いました。最終的に遺伝子検査を経て診断に繋がったのは静岡てんかんセンターでした。
病院を巡り原因不明と言われる事を繰り返す内に、標準治療の世界ではこの子の根本的な治療の解決や日々のクオリティーオブライフは難しいという思いが募りました。その頃から東洋医療に私の興味が向きました。しかし東洋医療に特化した病院が近所に少なく、漢方を調合してくれるお店があっても月単位、年単位となると高額になります。そこから独学で漢方、東洋医療を勉強して、鍼、マッサージ、そして中国にコネクションができて、鍼治療と手技の取得のために2人で中国へ渡りました。
渡航直前に遺伝子検査の結果が出て病名が分かりましたが、準備も進んでおり行って損することはないと思いそのまま中国へ行きました。行った先は治療院でもあり医療学校でもあり保育施設でもある面白い施設でした。
その頃はまだてんかん発作はなく体質改善が主でしたが、おそらく将来てんかん発作が出るだろうということでてんかん発作へのアプローチも集中的に教えて頂きました。帰国後、小学校入学前からてんかん発作が酷くなってきたので、中国で教えてもらったことが役に立っています。発熱で病院に行くことは少なくなり、発熱しても漢方を飲ませたり中国で教えて頂いたてんかん発作や感染症に対する手技を行うなど自宅でコントロールしています。コントロール難しく病院受診する時はだいたい入院になります。そのことだけでも中国へ行った甲斐はあったと思いますし、そういった経験から自分で勉強してやっていくという癖がついたように思います。
Q:CBDにたどり着いたきっかけについてお聞かせ頂けますか?
2022年秋頃、MECP2重複症候群の家族会で大麻製剤を使ったてんかん治療薬の治験の話で盛り上がりました。ウエスト症候群は治験対象外だと知り、独自で調べNaturecanさんのCBDにたどり着き、同主催の上映会を通して正高先生とGreen zone Japanの活動を知りました。
Q:CBDの原材料が大麻だということに抵抗はありませんでしたか?
最初は”大麻”という言葉に反応しましたが、正高先生のYouTubeは全部拝見し勘違いだとすぐに修正できました。新しいもの試す時はいつもですが、自分で試してから息子に始めました。
CBDを独自に極少量ずつ与えながら、正高先生のYouTubeやネットで学びながら、という感じで並行しながら試しました。治験の追い風もありましたし、少しでも発作が減って欲しいという心境でCBDの服用を開始しました。
Q:家族会や同じ疾患でCBDを試されている方は他にいらっしゃいますか?
いないと思います。標準治療ではないので、病院やドクターに頼れないこと、治験の経過を見守りたい人、経済的な問題、そして大麻という言葉に抵抗を感じる人。これらを乗り越えるのは大変な事だと思います。
Q:CBDを試してみて変化はありましたか?
カンナビノイド医療患者会入会前から独自で極少量から試していた最初の頃は変化がありませんでした。増量と共に発作の回数は減少傾向にあり、シリーズ発作の程度は顕著に改善しています。調子の良い時悪い時と波はあるのですが、CBDとCBGの量を増やした先週頃から明らかに良い波がきています。日中の表情や動作が明らかに違い、良い感触があります。
Q:シリーズ発作の程度が改善したとのことですが、雅人くんの発作の形や普段の発作の頻度について教えて頂けますか?
ウエスト症候群なので主にスパズム発作です。頭がカクンカクンとなるシリーズ発作と単発でガクンと脱力を伴う発作もあります。強直や間代発作はありません。
シリーズ発作というのは数秒間隔でカクンカクンが5分から10分続き、それを一括りにして1シリーズとして数えています。そのシリーズ発作が毎日何回あったかというのを記録しています。単発で起こるガクンという発作は1時間に1回あるかないかの頻度です。一瞬なので見逃すとカウント出来ませんし、24時間常に数えることはできません。
Q:CBDを使用する中で悩むことや困ることはありますか?
発作ゼロが理想ですが、増やしていけば発作がなくなるのか、どこかで見切らないといけないのか?そこの判断に迷います。
Q:主治医の先生にCBD服用のことは伝えていますか?
CBDのことは認知して頂いています。
主治医は私が漢方を取り入れたり中国に行ったり、医学を独学で勉強していることをご存知なので一生懸命で熱心なお父さんという印象をもってくださっています。診察では先生の意見を尊重しつつこちらの意見を言うようにして信頼関係を築き約7年くらいになります。治験が始まるという機運もあり、CBDについてネガティブな印象はなく、現在飲ませているCBDの量や発作の変化について診察時に聞かれるので正直に伝えています。
Q:現在抗てんかん薬は飲まれていますか?
今はデパケンのみです。
昨年はフィコンパ、一昨年はイーケプラという薬の2剤を服用していました。どちらも飲み始めから3ヶ月程は効きましたが、次第に効果が乏しくなりMAX量まで増量しましたが、効果上がらず撤退となりました。
主治医の先生はフィコンパの次をどうするか考えていただいていましたが、今までのような軌跡をたどるのではないかという思いと、今はCBDを服用しているのでCBDの量を調整することに私の軸足が向いていましたので、CBDを増やして発作の頻度に変化があるかを見極めたいと伝えて了解を得て現在デパケン1剤のみになっています。
Q:雅人くんの最近の生活パターンやご様子についてお聞きしても宜しいでしょうか?
特別支援学校小学4年生です。
訪問PT週1回、通院リハPT・OT月1回、訪問看護月1回、訪問診療月1回、訪問歯科隔週、小児神経科月1回、放課後等デイサービス(デイ)週1~2回利用しています。
朝はだいたい7時前後に起床しますが、朝食後再度寝てしまいます。私はその間にスマートウォッチで前日の睡眠スコアや脈拍、夜間の発作を分析し、朝食後の睡眠の深さや長さと併せて学校を遅刻するか欠席するか判断しています。
定刻に行ける日もありましたが、年々減少。欠席の場合は全ての予定をキャンセルします。学校は本人の体力を考慮して6限は早退。下校後にリハや通院などがあればその予定をこなします。デイがある日は学校後に利用し、帰宅してからはまったり過ごし21時には就寝します。
好きなことはテレビでお相撲やお天気お姉さんを見ることです。大画面テレビで等身大サイズの映像見て楽しんでいます。
Q:ご両親の生活パターンや日々のルーティンなど何か心がけていることがありましたら教えて頂けますか?
妻は正社員で平日フルタイム勤務をしています。下の子は保育園年長で妻と一緒に毎朝出掛けて帰宅します。
私は会社経営をしていますが、自分の時間で動けるように働き方を変化させてきました。
息子が1歳か2歳の時には地域の学校に行ったり、一般的な人生を歩むことは難しいんだろうなというのはすでに覚悟しました。学校や病院など全て息子を優先する生活に変化する必要があると感じましたので、コロナ以前からリモートやオンラインでの働き方にシフトしていきました。
平日日中は私が担当で、登校できる日は合間で仕事をこなし、子ども達の就寝後に深夜まで仕事しています。土日祝は妻が子供達の面倒をみて、私は終日仕事の事が多いです。
今が一番症状が進行しやすい時期なので、妻も私もあまり息抜きできていません。
Q:この度は患者会インタビューにご協力頂きまして、また大変貴重な話をお聞かせいただき本当にありがとうございました。
親の私がてんかん発作で一番怖いのは、転倒や骨折、一時的な意識の消失や機能退行ではなく、息子の笑顔が消えることです。
繰り返す発作によって感情が乏しくなっていくことで息子が笑うことを忘れてしまう未来は、何よりも耐え難く、今できることを全力で取り組み続けるのは、その強烈な恐れが原動力となっています。
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